そもそも「錆びる」とはどんな現象なの?
住宅環境にさまざまな影響を及ぼす「錆」ですが、一体「錆」とは何なのでしょうか?また防ぐ手段はないのでしょうか?
少し専門的になりますが、「錆び」とは「金属の表面の不安定な金属原子が酸素や水分などと酸化還元反応を起こして生成される腐食物(ウィキペディア参照)」とされています。
そもそも金属は自然界の鉱石から人為的に作られた物ですが、それが「水」と「酸素」が結びつくことで、「安定していた元の状態」へ戻ろうとする過程で発生するのが「錆」という物質の正体なのです。つまり、錆びていくことで本来の金属の姿に戻ろうとして行くわけです。
「錆びること自体」が自然な現象なので、それを防止することはかなり難しいことになると言えます。
マンション水道管の老朽化は「配管の材質」による劣化の進行状況で決まる?
マンション水道管の「材質」の変遷
マンション「給水管」の劣化状態はその「錆の進行」によって大きく変化し、進行のスピードは配管の材質により異なってきます。また材質はマンションの建てられた年代により異なります。
材質は細かく分類すると多くの種類がありますが、マンション共有部に絞ると大きく分け1975年以前と以降の2つのパターンに分けられます。
1975年頃までに建設されたマンションでは「亜鉛めっき鋼管」という材料が使用されていました。鋼管の内面に亜鉛めっきが施されているこの管材は、15年~20年ほどで配管内面が激しく腐食してしまい赤水や漏水などが発生し大きな問題となりました。(1997年JIS改正により、現在では水道用亜鉛めっき鋼管は上水道配管に使用できません。)
1970年代にはこの給水管内側の腐食をなくすために「硬質塩化ビニルライニング鋼管」が採用されました。これは管の内部に硬質塩化ビニル管が挿入されたもので配管内面の腐食問題は解消しましたが、今度は管をつなぐ「継手」のコーティングされていない部分が「錆びる」問題が発生しました。
その後1980年以降は、管材も「ステンレス鋼管」が利用されるようになったり、「継手」にも樹脂製の「コア」部品を挿入する工法が確立されるなど技術も進化しており、近年では内外面を防食対策した「架橋ポリエチレン管」「ポリブデン管」「耐衝撃性塩ビ管」等の管材が開発され大きく進歩をしています。
水道管の「見えない老朽化」にはどんな対策をすればよい?
外壁や建物外部の設備とは異なり、水道管は目に見えない住宅設備です。しかし知らない間に進行している給水管の老朽化は、「赤水」「漏水」などの大きなトラブルに直結しますので「事故前の対策」が重要となります。
一戸建ては、漏水などの問題が出た際には自らの判断ですぐに業者に相談することができますが、マンションなど集合住宅の場合、原因箇所の特定や部分的な対策では済まないケースが多くなるので注意が必要です。
基本的には先述した管材や工法により大規模修繕計画を立てて取り組む案件ですが、定期的に「老朽化診断」を専門業者に依頼することも検討してみると良いと思います。
老朽化が一番出やすく目安になる「水道メーター周り」の抜管調査や、「内視鏡」を使った調査で老朽化の可視化を行い、住民全体で結果を共有することが大切です。
またこの機会に、自分のマンションに使われている「水道管」がどんな材質を使っているのかを一度調べてみると良いかも知れません。